令和5年4月から月に60時間を超えた場合の割増率が変わることに伴って随時改定が必要ですか?
60時間超の残業が発生した場合には注意が必要です。
時間外手当は非固定賃金だから随時改定に該当しないと思いがちですが、今回の法改正のように割増率に変更があった場合(25%⇒50%)も該当期間に60時間超の残業が発生した場合は随時改定の対象となります。
【具体例】随時改定のタイミングが少し特殊なので注意
例①:月末締め翌月25日払い (4月1日~4月末で残業60時間超の場合)
5月、6月、7月支払いの3ヵ月に支払われた賃金で随時改定に該当するかチェックを行います。
この場合は特に問題ないかと思います。
例②:月末締め翌月25日払い (5月1日~5月末で初めて残業60時間超の場合)
この場合は、6月、7月、8月支払いの3ヵ月に支払われた給与で随時改定に該当するかチェックを行うのかと思いがちですが違います。実はこの場合も5月、6月、7月支払いの3ヵ月に支払われた賃金で随時改定に該当するかチェックを行います。
4月は残業が60時間に届かず、5月の勤怠で初めて残業が60時間を超えた場合でも、手当の割増率に変更があった4月1日~4月末の5月25日払いが変動月となります。
例③:月末締め翌月25日払い (6月1日~6月末で初めて残業60時間超の場合)
この場合も例②と同様で、5月、6月、7月支払いの3ヵ月に支払われた賃金で随時改定に該当するかチェックを行います。
例④:月末締め翌月25日払い (7月1日以降で初めて残業60時間超の場合)
この場合は、随時改定の対象外となります。
まとめ
4月~6月勤怠でいずれかの月で60時間超えの残業をした場合、今回の法改正に伴う随時改定のチェック対象となる。
いずれも60時間越えをしていなければ、7月以降の勤怠で60時間超えでも随時改定の対象外。
この時期は算定基礎届の期間とも重複しますので、取り扱いにご注意下さい。
7月~9月に随時改定が確定している従業員は、算定基礎届の提出対象から除外されます。
【参考】標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
今回の法改正に伴う随時改定の考え方は以下の事例と同様の扱いとなります。
問7-2 非固定的賃金が新設された月に、非固定的賃金が支払われる条件が達成されなかったために初回の支払が0円となったが、次月以降は実際に支払いが生じたような場合、起算月の取扱いはどのようになるか。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf
(答) 新たに非固定的賃金の新設がなされたことによる賃金体系の変更を随時改定の契機とする際は、その非固定的賃金の支払の有無に係わらず、非固定的賃金が新設された月を起算月とし、以後の継続した3か月間のいずれかの月において、当該非固定的賃金の支給実績が生じていれば、随時改定対象となる。 なお、非固定的賃金の新設以後の継続した3か月間に受けた報酬のいずれにも当該非固定的賃金の支給実績が生じていなければ、報酬の変動要因としてみなすことができないため、随時改定の対象とはならない。また、その場合には当該非固定的賃金の支給実績が生じた月を起算月とすることにもならない。